「予算がない」という理由で一人目人事に指導が必要なスタッフクラスを採用してしまうデメリット
- Capire(カピーレ) 伊藤亜里沙
- 2 日前
- 読了時間: 6分
「事業が成長してきて人材をもっと増やしていきたいので、そろそろ人事の
専任担当者がほしいな」
「経営層が採用業務を兼務している状態を解消したい」
と考えた時に、よく見かけるのが、
「予算がないからスカウト送信や面接の日程調整ができる、人事経験が浅い
スタッフを採用して、教えながら育てよう」
という考えのもとに一人目人事を採用するケースです。
網羅的に人事を経験している人が社内にいる場合には育てながらという方法
でも問題ないと思いますが、そうではない場合には、この考え方・やり方で
採用のギアを上げていくのは危ないと感じてきました。
素晴らしいサービス・プロダクトがあって、これからみんなで力を合わせて
事業を伸ばしていこうと思っていても、そのための組織作りや人材探しなどを
経営的に行うことができる人がいないとなると、いくつかの壁に直面しやすく
なり、それを直すためにより大きなコストがかかってしまいます。
事業や組織が適切に成長していく状態を作ることができる会社が増えていったら
良いなと考えているので、「今まさに自社がこの状態だ」と思われた経営者の
方は、良かったらそのまま読み進めてください。 ------------------------------------
目次
デメリットその①:
人事として最も業務難易度が高い時期を乗り越えることが難しくなる
デメリットその②:
人事組織の立ち上げが遅れる
デメリットその③:
組織のほころびに気づきにくい
これらを防ぐために、経営者にできること
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デメリットその①: 人事として最も業務難易度が高い時期を乗り越えることが難しくなる
一人目人事は、本来は「経営との橋渡し」「経営戦略や事業戦略を実現するための
人事戦略立案、実行」などの戦略的な役割を期待されます。
そのため、特に事業が成長していてその事業の成長を促進するためのメンバー募集を
している企業の場合には、会社が変化していく過程で起きるあらゆることを予測し、
先手を打つ組織設計、人材配置、人事制度構築、採用、人材育成が求められるので、
実は人事としての業務難易度が最も高いのがこの時期です。
つまり、「予算がないからスカウト送信や面接の日程調整ができる、人事経験が浅い
スタッフを採用して、教えながら育てよう」という考えは、スポーツに例えると、
「日本代表クラスの人材が欲しい時期にその競技にあまり触れたことがない人材を
チームに招き入れ、コーチは不在」の状態に似ていますので、厳しい時期を乗り越える
のが困難な状態を自ら作ってしまうことと同じなんです。
デメリットその②:人事組織の立ち上げが遅れる
いわゆるこれからのメンバーが一人目人事になることで、人事部としての機能が弱い
状態からスタートします。
全体を見渡すことができる人がいれば、この時期に人事部に必要な動きやそれを実現
するために必要なスキルがわかるので、どんな人材を何名採用すれば良いかを考慮
しながらスムーズに部署を立ち上げることができます。
デメリットその③:組織のほころびに気づきにくい
会社が急成長していく時期に組織化できず、採用業務と労務業務だけを遂行していると
起きてくるのが、以下です。
・事業の状態や組織状態に合わせた部署設計ができない
↓
必要な役員や管理職がキーになるポジションに配置されていない
↓
経営と現場の接続がうまくいかず、役職者を含めて社内全体の人材育成が進まない
・役員、管理職を含めた社員の能力の最大化ができていない
・社員同士が同じ方向を向いておらず、コミュニケーショントラブルが発生する
・生産性が低く、チームで働く良さが発揮されていない
・人事が他部門から信頼されておらず、人事的な取り組みがスムーズに運営できない
・良い人材が早く退職する
・人事評価のポイントが不明瞭である点に対する社内からの不信感が募る
・採用段階でのマッチングの精度が低い
といったことです。
組織課題が複数におよび、組織がかなり崩れてから、外部(コンサルティング会社や
業務委託人事)に人事制度設計を依頼したりするケースがとても多いのですが、
会社の状態を紐解いて、一番最初の原因は何だろう、と考えていくと、「一人目
人事を誰に任せるか」の段階における考え方・対応の失敗が大きいのだと思います。
これらを防ぐために、経営者にできること
経営者にできることは、いくつかあります。
人事に詳しくなくても、この2つを知っておき、対応していくことです。
1:「人事は高度専門職である」
2:「一人の人事に全部の役割をお願いしない」
最初からCFOとCOOを設置する会社はとても多いですが、これらの背景にあるのは、
CFO:
「お金の専門家なので必須だろう」
COO:
「事業運営に詳しい専門家は必須だろう」
という考えだと思います。
一方で、人事のCxOは、
CHRO:
「人事はそれほど重要ではないし、簡単だからなんとなく自社でできるかな」
と考えられてしまいがちです。
でも、多くの会社が同様の部分で組織課題を抱えていってしまう実態を考えると、
「人事の仕事は決して簡単ではない」のだと思います。
実際、採用業務の遂行には、マーケティング、営業、広報の視点が必要で、人事
制度設計や人材育成には経営目線、課題特定力、改善力が必要です。
労務は、法律の定期的なキャッチアップと修正力、定型業務遂行力が求められ、
どの領域においても、コミュニケーション力、PDCAを回す能力、経営陣と会話
できる複数の視点や人間力が必要で、すべての要素を兼ね備えている社会人は
それほど多くはありません。
そこで、一人の社員に何でも任せるのではなく、業務難易度を考慮して役割を
分担し、早い段階で人事部を立ち上げる方法が効果的です。
例えばこんな風に分担します。
【CHRO】
・経営戦略や事業戦略の理解→人事戦略立案
・経営会議などの主要な会議に出席して会社全体の状況を把握
・人事系のIR対応(上場企業の場合)
【人事マネージャー】
・人事戦略を実現するための目標設計・業務遂行
・成果向上に関する実務全般の責任者として動く
【人事スタッフ】
・スカウトや日程調整などを含めた各種人事業務遂行
・慣れていない業務は上の職位の人たちから徐々に教わっていく
※それ以外の業務は、それぞれの経験を考慮してCHROとマネージャーで相談して
担当者や進め方を決めていく
それぞれ、週5日・月160h分の業務量がない場合には、フルタイム正社員に
こだわらず、必要時間を算出して業務委託、時短正社員、週4日正社員なども
視野に入れて柔軟に考えれば、コストと任せる業務のバランスもより良いものに
なるのではないでしょうか。
そして、そのためには、
・人事従事者の人件費を予め確保しておく
・人事課題が噴出する前に組織を整えるための予算も調達しておく
ことができれば、「予算がないから○○」という考え方とは逆の動きができると
思います。
自社の状態をスポーツに置き換えた時に不自然があるものがないかを確認しながら
進めるのがポイントです。
人事は会社の未来を作る仕事であり、人の体で言うと心臓のような役割を果たします。
先行投資の目線で、より良い会社づくりをしていきたいですね。
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