私は今人事領域のコンサルタントをしていますが、独立前は会社員として
10社で働いてきました。
当時はしょっちゅう面接を受けていて、たくさんの会社を見て、多くの 面接官の方にお会いしてきたのですが、候補者としていつも思っていたのは、 「過去を聞く面接官の方が多いな」ということでした。
自分の人生をジャッジされているような、決断に1つでも傷があったら
お見送りされてしまうような、そんな雰囲気を感じながら複雑な気持ちで
質問に答え、内定の連絡をいただく。
そしてこう思うのです。
「過去について沢山質問する面接を通して、私のことがどのくらい
わかっただろうか。」
今は私が面接をさせていただく側ですので、先に面接官側の考えを お伝えしますと、面接官が過去について質問するのは、 「どんな時にどんな対応・考え方をする人なのかを知りたいから」です。
未来のことはわからないので過去を通してその方を知ろうとする。
いわば、金融系の審査と似た発想と言えるでしょう。
でも、候補者側の考えはこうだと思います。
「面接では本当のことを話しにくい場合もある。」
リクナビNEXTさんの「退職理由の本音ランキング」を見てみるとわかります。
1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%)
2位:労働時間・環境が不満だった(14%)
3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(13%)
4位:給与が低かった(12%)
5位:仕事内容が面白くなかった(9%)
6位:社長がワンマンだった(7%)
7位:社風が合わなかった(6%)
7位:会社の経営方針・経営状況が変化した(6%)
7位:キャリアアップしたかった(6%)
10位:昇進・評価が不満だった(4%)
退職理由をジャンル別にすると、
●人に関するもの:
43%(1位、3位、6位の合計)
●労働時間・労働環境・年収など条件面に関するもの:
30%(2位、4位、10位の合計)
●仕事内容に関するもの:
15%(5位、7位の一番下の合計)
●社風:
6%(7位の一番上)
●経営方針、経営状況:
6%(7位の真ん中)
「経営方針、経営状況」以外は、面接で説明してわかってもらうのに 一工夫いりそうです。
例えば、人間関係でとても理不尽なことがあり、転職を決意したとします。
それは、その出来事を知っている同じ会社の同僚の方たちならみんなが その方の味方になってくれるかもしれませんが、初対面の面接官は その状況を実際に見たわけではありませんし、まだ信頼関係もありません。
よって、この話をしても、面接官に「どっちがどうなんだろう」と思われて しまうだろうなと予想し、結局本当のことは言えず、第2、第3の転職理由を 伝えるのだろうなと思うのです。
転職・退職理由や志望動機は、時につじつま合わせになったり大義名分を 伝えることになってしまうケースがあるということを、企業側は知って おいた方が良いと思います。
また、ある程度歳を重ねた候補者に過去のことを訊きすぎるのにも注意が 必要で、今は違う考え方を持って生きている可能性があるので、当時のことを 聞き取るだけの質問をしても、今のその人の価値観に辿り着くことはできません。
恋愛に置き換えてみます。
恋愛の場で、これから付き合いたいなと思っている異性に、
「あなたはなぜその人と付き合って、当時何が起きて、そしてなぜその行動を 取って、なぜ別れたの?」と、付き合った人数分質問をするでしょうか。
その過去から、二人の未来は見えるでしょうか。
そして、自分の人生をジャッジしたり間違い探しをしたりしているように 感じる人と、お付き合いしたいでしょうか。
採用は、会社の未来を創る仕事です。
過去に関する質問の全てが良くないわけではなく、質問をするとしたら必要な 観点とコツがあります。
「この会社ステキだな」
「入りたいな」
と候補者さんの心に留まるような温かな企業スタンスとお相手を理解するための 建設的な面接質問については、コツがあります。